スコティッシュフォールドは障害を持っており病弱で短命でかわいそうな猫と言われていますが本当にそうでしょうか。スコティッシュに多い病気とともに短命といわれる理由と実際のデータを確認していきます。
スコティッシュフォールドはかわいそうな猫?
スコティッシュフォールドの一番の特徴は折れ耳ですが、折れ耳こそ遺伝性の病気とされています。
人間から見ると垂れた耳こそかわいいですが、耳が折れているのは軟骨の障害で「骨軟骨異形成症(こつなんこついけいせいしょう)」とよばれるものです。
半世紀ほど前に突然変異で現れた1匹の折れ耳の猫「スージー」から(折れ耳を残すために)繁殖させられた背景から、スコティッシュフォールドは遺伝的病気に弱い品種ともいわれています。
先天的な病気とも捉えられる折れ耳のスコティッシュは、倫理的な理由から発祥のイギリスでも猫種として認められていません。
そういった歴史の側面からも「スコティッシュフォールドはかわいそうな猫」というのが定着したものと推測できます。
ただ実際はスコティッシュフォールドは病弱の品種ではなく、特定の遺伝的要因の病気に弱い品種とされています。
スコティッシュフォールドに多い病気
スコティッシュフォールドで気を付けてあげたい主な病気は以下。
やはり遺伝性の病気が多く、特に折れ耳のスコティッシュは「骨軟骨異形成症(骨瘤)」になりやすいので日頃から気を付けてあげたいです。
長い間、家族として一緒に暮らすためにも、最低限どんな病気があるのか、どういったところに気を付けておけばいいのか等を知っておきましょう。
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骨軟骨異形成症(骨瘤)
スコティッシュフォールドで最も気を付けておきたい病気が「骨軟骨異形成症(こつなんこついけいせいしょう)」とよばれる間接の遺伝性疾患です。
耳が折れているスコティッシュフォールドも耳の骨(軟骨)の異常からくる骨軟骨異形成症と言われています。
また耳以外にも手足の「骨瘤(こつりゅう)」とよばれる間接部分にコブができ腫れることから単に「骨瘤」ともいいます。
重度になると骨瘤の痛みで歩けなくなったり、足を引きずる、ジャンプできないといった症状がみられます。
また折れ耳の場合は(目に見えて分かる症状の)発症率が高く、折れ耳同士の交配で生まれた子猫には非常に高い確率で「骨軟骨異形成症(骨瘤)」が発症してしまいます。
骨軟骨異形成症になる確率はどれくらい?
折れ耳のスコに関しては軽い重いは違えど必ずかかるとされています
予防と治療法
骨軟骨異形成症(骨瘤)の根本的な治療法はなく、痛みを和らげる鎮痛薬や放射線療法になります。
遺伝性の疾患なので予防もできませんが、四肢の間接に負担がかからないように、体重の管理(太らせないこと)と高いところからジャンプをしないように(ジャンプする所にはカーペットを敷くなど)気を付けてあげたいですね。
折れ耳同士の交配は倫理的に御法度とされています。ブリーダーやペットショップからスコティッシュフォールドを買う場合は、必ず両親の耳(立ち耳か折れ耳)を確認するようにしましょう。
外耳炎
折れ耳のスコティッシュフォールドは耳が蒸れやすいめ、外耳炎にかかりやすい傾向にあります。
外耳炎になる理由は様々で、アレルギーによるものから細菌やホコリなどの異物、さらにミミヒゼンダニ症(耳ダニ)とよばれる寄生虫が原因で発症します。
耳を痒がっている、耳が臭い、耳が赤くなっているなどの症状がある場合は外耳炎の可能性があるので、早い段階で病院で診てもらうようにしましょう。
予防と治療法
特に折れ耳のスコティッシュフォールドは、普段は耳の中が見えにくい状態になっているので、定期的に耳の中もチェックする必要があります。
週1回ほどのペースで綿棒やカット綿などを使って優しく拭いてあげるようにしましょう。
綿棒を使う場合はペット用の綿棒を使用して、目で見える外側だけを掃除するようにすれば安心ですね。
肥大型心筋症(HCM)
肥大型心筋症(ひだいがたしんきんしょう)とは字のごとく心臓の筋肉が厚くなることで、心室の空間が狭くなり十分な血液を送り出せなくなる心臓の病気です。
スコティッシュフォールドと交配されているアメリカンショートヘアやブリティッシュショートヘアなどでも見られており、遺伝的要因が大きいとされています。
初期の症状はあまりありませんが、血液が上手に循環しないことで少しの運動で疲れたり、呼吸が荒くなっている場合は注意が必要です。
特に後ろ足への動脈で血栓が詰まることで、後ろ足の麻痺や動かなくなることもあります。
予防と治療法
発症は生後6ヶ月~とされ、比較的にオスの方が発症しやすいとされています。
肥大型心筋症は予防もできず、完全に治す治療法もない状態で、心臓の現状維持ができるお薬の治療になります。
肥大型心筋症は猫の心臓病の中でも最も多い病気とされています。治すことができないとても苦しい病気とされていますが、早期発見で痛みを伴うような発症リスクを抑えることもできるので定期的な健康診断が大切になります。
多発性嚢胞腎(PKD)
多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)とは肝臓に嚢胞(のうほう)が発生して肝臓機能が低下する病気です。
遺伝性の病気でペルシャ系の長毛種やアメリカンショートヘアがかかりやすい病気とされています。
親猫のどちらかが多発性嚢胞腎だと50%以上の確率で子猫も多発性嚢胞腎になるとされています。
7歳~10歳の中高齢で発症するケースが多く、初期症状はほとんどありません。水を長い間飲んでいる、体重減少してきた、脱水症状や嘔吐などを繰り返している場合は注意が必要です。
予防と治療法
遺伝性の病気のため予防をすることができませんが、遺伝子検査で発症する素因を持っているか調べることは可能です。
完治させることができない難病になりますが、腎臓機能をできる限り維持できるような食事療法や内用薬の投与での治療となります。
多発性嚢胞腎の病気になる猫の確率は1000分の1で、多発性嚢胞腎を持つ親猫の繁殖は推奨されていません。そこまで神経質になる必要はありませんがスコティッシュフォールドも多発性嚢胞腎の遺伝性疾患が隠れている可能性があると覚えておきましょう
スコティッシュフォールドの寿命につて異論
スコティッシュフォールドは他の品種の猫ちゃんよりも短命とよく書かれていますが、そのどれもがエビデンスや一次ソースがなく他の記事の受け売りばかりです。
実際に信頼できる現役の獣医師さんに聞いたり、実際のデータを見るとそんなこともないことが分かってきました。
アニコムが発表している「家庭どうぶつ白書2017」ではスコティッシュフォールドは平均値の13.23才(契約頭数上位10品種の中)よりもすこし寿命が長い結果でした。
順位 | 品種 | 平均寿命(歳) |
1位 | 混血猫 | 14.3 |
2位 | 日本猫 | 14.3 |
3位 | ペルシャ(チンチラ) | 13.9 |
4位 | ラグドール | 13.5 |
5位 | アメリカン・ショートヘア | 13.5 |
6位 | スコティッシュ・フォールド | 13.4 |
7位 | ロシアンブルー | 13.1 |
8位 | ノルウェージャン・フォレスト・キャット | 12.6 |
9位 | メイン・クーン | 12.5 |
10位 | マンチカン | 11.2 |
平均値 | 13.23 |
参考 家庭どうぶつ白書2017
これで「ほら見ろ!違うだろ!」と言いたいわけではなく、皆が言っていることが正しいわけではない(実際にデータを確認してみたり、信頼できる専門家に聞いてみて確認してほしい)ということです。
短命というのは、スコティッシュフォールドが「遺伝性疾患が多い=病弱=寿命が短い」という発想から来ているものと考えられますが、そんな単純なものではありません。
ただ、スコティッシュフォールドに遺伝性疾患が多いといった認知が進むことで、病気への警戒と予防で寿命を延ばしている可能性も考えられますね。
とにかく、スコティッシュフォールドは遺伝性疾患が少なくないというのは事実ですが、短命というのは根拠のないデマとも取れるので、一概に信じ込まないようにしたいところです。
獣医師さんいわく、スコティッシュに限らず血統証の猫種はどれも血が濃くなる分、少なからず遺伝性疾患が出てきてしまうようです。
レオ
まとめ
私自身もスコティッシュフォールドの病気について調べていくうちに、多くのことを学び考えさせられました。
人間のエゴのために、遺伝的病気が多いと分かっていても繁殖が繰り返されて、苦しむ猫ちゃんがいるということは何ともいたたまれない感情になります。
ただ、今生まれているスコちゃんや、病気になってしまったスコちゃんに罪はありません。
精一杯かわいがってあげて、できる限りの予防と対策をしてなるべく病気かからないようにサポートしてあげることがなによりも大切だと感じます。
またスコちゃんを飼うことは決して悪いことではありません。正しい知識と認識を持ち、間違った情報や安易な気持ちであやふやなことを言ったり傷つけたりしないように注意したいですね。
ここではスコティッシュフォールドに多い病気を紹介しましたが、病気のことは専門性が高くなるので、気になることがあれば必ず獣医師に相談するようにしましょう。
またストレスは万病のもとともいわれているので、猫ちゃんにストレスがかからない環境作りも必要ですね。
ここで取りあげた病気は初期の症状はあまり出ないものも多いので、定期的な健康診断も大切です。
猫ちゃんは何もしゃべってくれないのと痛いのを隠そうとします。
気付いた時にはもう手遅れとなる前に、少しでも愛猫に変わった様子があればすぐに病院で見てもらうようにしましょう。
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